きざし

モニタの傍らで、クワズイモがまた新しい茎を伸ばそうとしている。
ひとつの茎の腹を割るようにして、新しい葉と茎が少しずつ、ゆっくりと出てくるのだ。
そして新しい茎が生え切り、青々とした葉が大きく広がる頃には、なにごともなかったのように割れ目は閉じている。


最近、ときどきふいに現実感を失う時がある。
見慣れた自分の部屋の光景が、そこに居る恋人の存在が、母親の声さえも、そして電車の窓に映る自分の顔にまで。
この生活を始めてからの歳月が、生まれてから今までの過去が、一瞬にして遠くへ飛んでいったような気がする。
たぶんあまり良くない兆候なんだろうな。