門(夏目漱石)

門 (新潮文庫)

門 (新潮文庫)

やっと「三四郎」からの三部作を読み終えた。長っ(何十か月越し?)!
こうもなんにも起こらない、当たり前の話とは驚き。小津の世界以上かも。
これが新聞の連載小説だったっていうからさらに驚き。
だけどちゃんと引き込まれるからこれがまたふしぎ。このわりきれなさがリアルで(まともで)すごい。


かつては人生の主人公だった若者の、その後の長く細い人生。「それから」のそれから。三部作の最後がこうなるとは。
私もだけど30間近になって、社会人経験も無駄に延びてきて、身に覚えも少しではなくあったから、読む時期としては悪くなかったと思う。10代が読む本じゃないな!ノリノリやアゲアゲやヒルズ族や赤文字系にも向いてないな。


行き詰まって、座禅を組みにいく気持ちはちっともわからなくないよ。
目の前の問題放り投げてそんなことしたってなんにもならないことはわかりきっているのだけれど、それでも裏技があるんじゃないかって思う(「美名に欺かれる」)のが人間の愚かなところだ。*1
門は自ら開けるしかない。辿り着いたら、開けなきゃしょうがない。だけどこうして開けない人の方が多いのかもしれない。
「門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待つべき不幸な人」って描写はさすがだ。ほんとそうなんだ。
こういうのがじめじめした日本人の特徴なのかなあ。

*1:巷で「悩みがふっとぶ10000の言葉」(←重い)みたいな安易な本があれだけ溢れているのもそういうわけだ