sunset-sentimental

空調のきいた殺風景なオフィスで淡々と仕事をしていても、夏のサンセットはふいに甘酸っぱい感傷を引き起こす。
きっと夏休みのせいだろう。
学校にも旅行にも行かないくせに、毎日何をしていたんだか、夏休みはいつもあっという間に過ぎて、私はよく過ぎ去った日数と残りの日数を数えては分数の計算をしていた。
白い外灯のついた近所の公園をあとにして、夕飯の準備のにおいが漂う家々を横目に家へ帰ると、たいてい奥のキッチンから母がおかえりと言ってくれた。
いつだったかずいぶん前に、12歳まではとにかく遊ぶことが大事なのだ、その記憶がその後大切になるのだからというようなことを児童作家か誰かが言っていたのを読んだけれど、本当にそうだと思う。
だって、ふとした瞬間に私をさらうこうした幽かな色彩を帯びた空気は、誰かが私の名前を呼ばなくても、私をやさしく支えてくれる。