「遠慮しないでどんどん言ってね。あ、遠慮なんてしてないか、ハハハ」
と笑顔で言われて、私は笑ったままかたまってしまった。


いつだったか、まだ大学生の頃、いとこの家でいとこが言った。
「○○ちゃんは遠慮なんてしてないよねー」
それを見ていたおばさんが「そんなことないよね、遠慮しないでね」とフォローしてくれたのも覚えてる。


センセイは「(もしかして)遠慮してる?」と続けたけれど、私は手に持った原稿から顔が上げられず流すふりをした。


もっと前、高校生の頃、ステイ先のママは「あっさりした子」と私を形容した。
帰る時、彼女は私がとても気に入って常に食べていたピスタチオをたくさんもたせてくれた。
私は彼女が好きだったけれど、書いた手紙は結局出せずじまいだった。


仕事は大詰めを迎えており、私たちのやりとりは熱心で、逼迫していた。
センセイはたぶん、私に好意的だ。彼はきっと私を認め、その上で面白がっていると思う。
そう理解していてもなお、なにも言えない、私は依然として変わっていなかった。
ずっと曝していたつもりだったのに、まるでちっとも固くなってなかったなんて、まったく、肩をすくめるばかりだ。