文鳥/夢十夜(夏目漱石)

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

ちょこちょこと、途中中断もして、読了まで随分かかってしまった。特に「思い出す事など」という病床の記憶を辿りながら書かれた作品などは、当たり前だけれど病床の描写があまりに延々と続くので、途中で飽きてしまった。


とはいえ、漱石おじさんの凄いと思うのはその描写の細やかさ。ちょうど東山魁夷と同じで、「描きたいものを描いている」職人感がありありとあるところ。
私はこんなエッセイのような作品は初めて読んだのだけれど、エッセイでその才がいよいよ伝わってきた。なんでもない日常の、ふとした瞬間、ふとした光景、ふとした感情の動きを綿密に、的確に、巧みに言葉を操って描写してしまうこの人の文章に、何度もため息をつかされた(誤字が多くて統一もなってないといういい加減さの一方で!)。


以下、その他雑感。
・時代もあるのかもしれないけれど、この人異性の友人はいなかっただろうなと思う描写がいくつかあった。
・他人(家族も含め)に対して結構冷たいなと思うところがあったのはやっぱり自分ばっかり見る人だから?
・今と同じように昔のハンドクラフト感を慈しんでいるのが可笑しかった。
・ケーベル先生をはじめとするおじいちゃん先生は、私もきっと好きになっただろうな。