メイク・ミー

はるか高い部屋の窓辺にはちょうど私が座れるくらいの余裕があって、壁一面の大きなカーテンの向こうでずっと外を眺めていた。
遠くで月が霧に霞んでも、ビルについた電気は煌々としている。
眼下を行き交う車も人も、小さすぎて歪んで見えた。


私は膝を抱えてまとまらない思考をただ巡らせている。
犬を連れて散歩する二人組。いつの間にかビルの明かりは消えていた。
やがてシリアルにかけた牛乳のような朝が来て、容赦なく太陽が昇り、そして真上から照りつけた。


霧吹きのような時間。
恋人は、長い物語を聞き終わった後の、感嘆のようなため息をついた。


相変わらず私のことばかり考えていると彼は言う。
どこかからまた音楽が聴こえる、僅かに反応する躯。
これは、あのシンフォニーに繋がるステップの始まりなの?
私の腰はすでに疑い深く、なかなか椅子の背を離れようとしない。
あの腕が差し伸べられたら私は唇を引いて、睨みながらも手のひらを乗せるかもしれない。
だけど本当は誰かに手を引かれたいんじゃない。
それともどうでも立ち上がって躯を動かしてみれば、いつかまたステップを取り戻してその首を引き寄せるのだろうか?
この曲が終わってしまうのが怖い。