ザ・コーポレーション

企業は天使にも悪魔にもなる

@渋谷・UPLINK X
監督:マーク・アクバージェニファー・アボット
原作、脚本:ジョエル・ベイカ

http://www.uplink.co.jp/corporation/
http://www.thecorporation.com/(英語)


乱暴に言うと「“ブッシュ”を“企業”に置き換えた『華氏911』」みたいな、カナダの長編ドキュメンタリー映画。内容はこれでもかというほどたっぷりで面白かった。
けれど字幕は観づらいし腰は痛くなってしまうミニ・シアターでは長過ぎた。後半は時計を見てしまうほど辛かった。そんなわけで、拡大ロードショウになって多くの人がちゃんとした映画館で観られるようになるといいなと思った映画。


映画に登場したマイケル・ムーアが「企業は儲かるのだったら自分の首を吊るロープだって売る」というようなことを言っていたけれど、この映画を観て私は、企業はいうなれば人間が作ったシンプルな利潤追求ロボットのようなもので、人間の使い方次第なんじゃないかなあと思った。
企業は(たとえ法律上、人と同等に扱われていても)単なる金儲けマシーンだとすると、私たちは企業のHPに載ってる倫理だとか使命なんてものを信じて頼りにすべきじゃなくて、ちゃんとチェックして必要とあらばコントロールしなくちゃいけないってことになる。
そして、政府がコントロールできないほどに企業が成長してしまった現在の社会では、その手綱はすでに私たちの手にパスされているのだろう。もはや私たちは企業からの一方的なメッセージを受け取るだけの従順な消費者ではなくて、こちらからもメッセージを伝えることができる(伝えなくてはいけない)立場にあるのだろうな。そういえば株も身近になったことだし、こうしてブログなんていう場さえ提供されてたわ。
たいへん、大人の階段がこんなところにもあったよ!…というところで以下さらに詳細。


映画が教えてくれた、知らなかった様々な事実は刺激的だった。たとえばー

  • IBMはナチスから商品を受注して毎月メンテナンスしていた

一瞬ショッキングだけれど、企業は利潤を追求するものなのだから、まあそんなものだろうなと思った。戦後の日本だって、憲法九条を抱える一方の軍需景気で突っ走ったわけだし。

  • ナイキのシャツを縫う少女の、値段に対する賃金の割合が0.3%

これには驚いた。欧米のハイファッションで高価な商品がアジアだとか中東製だったのに気付いた時、「えーこれほんとにこんなにするの?」っていうのはよくあることだけれど、やっぱりいわゆる「ブランドもの」の値段の中身って実際にほとんど空っぽで、ブランドそのものの対価であると理解してもよさそうだ。
それにしても鬼のような搾取っぷり…労働者にも、消費者にも。消費者はまあ自己責任かもしれないけれど、「収益の一部を子供達に」とかいうラベルを縫ってる子どもの気分って、一体どんなんだろう?

水道事業の民営化により日給の3分の1(たしか)が水代になってしまった話。市民は雨水を集めることさえも自由にできなくなったらしい。
小沢健二の「うさぎ!」の第一話の水のくだりは、単なるおとぎ話(昔話)じゃなくて実際に起こっていたことだったのね。全然知らなかった!
コチャバンバでは結局市民の抗議行動(暴動)により、自分たちの手に水を奪回したのだけれど、日本の水道局民営化は果たして…心配になってきた。


ほかにも知識として得るところの大きかった映画ではあったのだけれど、映画としては…少なくとも私にとっては映画よりもテレビ番組の作品に思えた。
評価:★★★☆☆