イカとクジラ
監督、脚本:ノア・バームバック
出演:ジェフ・ダニエルズ、ローラ・リニー、ジェシー・アイゼンバーグ、オーウェン・クライン、ウィリアム・ボールドウィン、アンナ・パキン
@新宿武蔵野館
いまどきこんな地味なのあり?というタイトルにひかれ映画館へ。
家族崩壊という点では「息子の部屋」と同じなんだけれど、(死が介在してないこともあるのだろうけれど)タッチは全然違う。
両親の不仲、離婚、家族の混乱とシリアスな状況を描いているけれど、悲壮感たっぷりではなく、リアルだからこそコミカル(そう!)な展開が続く。
だけど、やはり子どもたちにはそのダメージがちゃんと現れていて…笑いながら、はっとすることになる。
最後はもうちょっと描いてほしかったけれど、背伸びや誤魔化しのない、良い作品だった。
でもこの映画はテーマも描き方も日常的なだけに、見る人の置かれている位置によってかなり印象が分かれるだろうな。
私は、アメリカ人のユーモア精神が好きだなあと改めて思った。
イカ(!)長々と。
- 兄弟をはじめ、俳優たちがみんなよかった。音楽も良かった。
- あの両親は、親としては自分最優先で失格だろうけれど、ちゃんと家族への愛情も持っていて、それなりに一生懸命で、けして理解不能な変人ではなかった。こういうものだからとかこうしなければということで動くのではなく、年甲斐もなくじたばたして怒ったり泣いたりふらふらする彼らの自由さに、呆れつつも好感を持った*1。
- でも逆に、崩壊しかかっていた家族を「いい家族だったのに」と言う子どもたちの視線からすると、とてもそんなふうには思えないだろうなとも思う。
- 大人はたいして変われないかもしれないけれど、もう、イカとクジラが怖くないことに気付いた長男は、きっとこの状況を乗り越えていけるのだろう。ぶっとんでいるようでぶっとんでいないこの映画らしいエンディングだけど、希望をほのめかすようなまとめ方をしてくれたことに嬉しく思った。
- 「現実はそんなものよ」(母)ってねー。すてきな日々がずっと続くような気がしたり、それがあっという間に崩壊したり、投げ出したくなるようなことが次々起きたり、そのくせ笑えたりするんだよねー。
評価:★★★★☆
*1:あんなんでも親になっていいなら、私にもできるかもとか思ったりして。自分の息子を「ピクル」「チキン」となんでもなく呼ぶ母親の姿に未来予測的心当たりがあったりして