普通の人々

監督:ロバート・レッドフォード
出演: ドナルド・サザーランドメアリー・タイラー・ムーアティモシー・ハットン、ジャード・ハッシュ
普通の人々 [DVD]
まずタイトルがいい。地味だけどいい映画。
事故で2人の子供の1人を失って突如崩壊した家族を描くというのは「息子の部屋」とまったく一緒*1。違うのは取り乱すのがお父さんじゃないってこと。子供同士の喧嘩を笑っていさめるお父さんは素敵だった。
私個人は兄弟間のえこひいきも感じず育ち、良好な家族環境だったと感じているけれど、「カメラを渡せよ!」って母親に切れる高校生には共感できる。今の私でも、切れることはなくても非協力的な態度になると思う。その後何事もなかったかのように「スマイル!」と無理やり取り繕うとする母親に私なら我慢できない。
物理的距離のない「家族」という身近すぎる関係は、一見親密なようでいて、意外と惰性に支えられているだけの脆い関係なのかもしれないと思った。そしてそのことに気づいているかどうかは、有事の際にポイントになり得るかも?
また、高校生に「母の愛の限界を知れ」という分析医の言葉が残酷に響いた。でも「友達だから」という分析医の言葉は私にはどうとらえていいかわからなかった。
普通の人であるところの私は、この映画はそういえば家族3人の誰にも入り込んで観ていた。そういう意味で、やっぱり「普通の人々」だったのかと思った。
ただしラストからの展開はいまいち腑に落ちなくて残念。特に父子が抱き合ったままズームアウト、っていうのはちょっと、いきなり「映画」になっちゃったというかんじで。
エンドロールでカノンが流れたとき、「上品」という彼の水泳仲間の揶揄が脳裏をよぎった。
30年近く前の映画にも関わらず、現代にまったく通用する話なのだけれど、なんとなく、今より豊かな(余裕ある)時代だったのかなと感じた。


評価:★★★★☆

*1:息子の部屋のほうが後の作品