東山魁夷の世界 −創作の軌跡と同時代の人々

東山魁夷


東山魁夷館に行くのはこれで3度目だけれど、今回は開館15周年ということで記念特別展が開かれていた。彼の写真、衣服や、下図が併せて展示されていたりして、興味深かった。
描きたいと思った光景に出会ったら、スケッチをして、構図を決めて描いてみて、色をかえて描いてみて、原寸大に下図を描いてみて、そしてようやく描き出す、その丁寧さに、職人魂を感じた。
オーダーを受けて、こういうものを描きたいと思ってから、そんなふうに取り組めるのは、ただ執念があるだけではなく、脳裏に描いた光景を表現するための技術を備えているからに他ならない。
挑戦的な「アート」が氾濫し、ただエゴを炸裂させて芸術家だと言い放ったり、鑑賞者から歩み寄れと要求するような作品が多い中、こんなふうに美しい風景を描き出すことを追い求める東山魁夷のひたむきな姿勢は、本来の画家のありかたを示してくれているように思えた。かっこいい。
白い馬が浮かび上がったりする彼の作品は、私にはファンタジック過ぎるのだけれど、たぶん、もっと年をとったら彼の穏やかな作品の良さがもっとわかるような気がする。


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