注ぎ足されない湯呑み

12時近くの大戸屋は、多くの女性で賑わっている。なんでだろうと思ったけど、たぶん男性は飲み屋に行くからだろうな。
私はかれこれもう1時間もこの奥の席に陣取り、店全体を眺めるともなく見ている。パチンコでいつもの倖田來未の台を取り損ねたおばさんや、友達とよもやま話で盛り上がっている若い女の子や、いろんな人が気ままに過ごしていて、意外に居心地は悪くない。
土曜の夜になぜ一人でそんなことをしているかというと、夕飯のおかずで夫婦喧嘩をして家を出てきたとか、休日出勤帰りで立てないほど疲れてしまったとか、つい食べ切れないほど大量に注文してしまって途方に暮れているとか、ここにいれば大野くんが現われるという怪情報が舞い込んだとか、そういうことではなくて、鍵を持って出るのを忘れて出かけてしまったため、家へ帰れないからです。仕方がないので、忘年会に出かけた夫の帰りをこうして待ちぼうけているわけです。
ゆっくり食べたごはんも下げられてしまい、今私の目の前には頼りなく湯呑みと空になったコップがあるだけ。しかも、こうしているうちにも眠くなってきました。しかしここで負けてしまえば、歌舞伎町の24時間営業のマックで、深夜に独りトリップしていたおばあさんのようになってしまいます。あれは怖かった。最近でいうところの大戸屋難民です。
そうこうしているうちに夫からこちらへ向かったと連絡がきました。では引き続きあと30分、眠気とプレッシャーと闘います。グッドラックわたし。
わ、早速ラストオーダーのお知らせがきた。負けないぞぇ