シングル化する日本(伊田弘行)
- 作者: 伊田広行
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2003/04
- メディア: 新書
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日本では、結婚へ踏み切るハードルは高くなり、非婚は増え、少子化は進んでいる。そして、右肩上がりの成長など既に絵空事。
そろそろ日本の社会制度も、非婚化・少子化時代の発想転換が必要では?
すなわち、社会の単位を家族単位からシングル単位に切り替えることー「サラリーマン、専業主婦、子ども二人」というような標準家族像の設定をやめ、多様性を認めてさまざまな”個人”が平等に政策・制度の恩恵を受けることができるようにする。そして、それに伴い小さな政府を志向するアメリカ型新自由主義(=小泉路線)をやめ、大きな政府を志向する北欧型社会民主主義(→家庭機能を社会でカバー)を目指すべきである。という本。
経済成長(モノ)でなく生活の質に注目していこうという発想の転換には同意するし、私も大きな政府のほうがいいと思っていたけれど、後半の「シングル化社会のシミュレーション」になるとどんどんぶっとんでいって、ついていけなかった…。単にどちらかを選ぶのではなく、日本にあったもう少し別の方法がありそうな。
以下は私のハイライト。
1)結婚・出産がレジャーになっている
独身とかパラサイトの生活はラクだし、恋愛は楽しいが、どうもそれは時間稼ぎで甘えている気がすると。そういう生活に輝きがなくなり、同じパターンに飽きてくるのだ。(中略)そこで、ここではないどこかに青い鳥がいるのではないかと考える。それが、結婚というある意味「これまで経験したことのない、新しい、不自由さ」のなかに入ることだ。(中略)つまり、自分の現状に満足していないから結婚や出産に現状打破の突破口を求めている人が多いのだ。それがいまだ結婚願望が根強く存続する理由だろう。
これは言い換えれば、結婚が「高度なおもちゃ、高度なレジャーになっている」ということだ。
- そういう面はあるかも、と思った。結婚はいいやと否定しても、別にこのまま一人で一生かけてやりたいことがあるわけではなし、一人でしたいことはある程度できるようになっちゃったし、というかんじで。友人との会話でも「自分のためだけに生きてるんじゃつまらなくなってきた」という話が出たし、大人になるってそういうことのような気がしたりして(社会と辻褄あってるし)。善し悪しは別として。
2)日本では福祉は女性(家族)任せで家族を社会的に援助しない
(世界の多様な福祉国家の類型の)分類から見えてきたことは、日本が、新自由主義でも社会民主主義でもない、特異な福祉国家であるということである。
それは、家族単位設計ゆえに、女性の無償労働を福祉の代替物として利用し、結果として未熟な福祉国家(みんなに福祉を保証する普遍主義でなく、貧しい人だけ助けるという選別主義)となっているのである。
- 自立支援法が施行されてますます、自立しきれない障害者の家族(特に親)の大変さについて疑問を感じていたのだけれど*1、それはこういうふうに説明できるのかと納得。老人介護についてもなぜ女性だけに実働を期待されるのかなと不思議に思ってました。税金はけして安くないぞ。
*1:老いた親が障害者の我が子の将来を案じて心中を考えてしまうような、家族(たいてい母親)の犠牲を前提にした現状はどう考えてもおかしいでしょ