スラムドッグ$ミリオネア

監督:ダニー・ボイル
スラムドッグ$ミリオネア [DVD]
ネタばれあります。
4月にDVDで観たこの映画。全然興味はなくて、なりゆきで観ることになっただけだったのに、目を離せない力作だった。
エンディングのボリウッドダンスが最高!みたいな感想をよく聞いたけど、私には全然そうは思えず、踊る主人公たちを呆然と見ながら映画の重すぎる内容に打ちのめされていた。
だってたぶんまったくのノンフィクションではないと思ったから。
映画自体は、タフな子ども達が爽快で、スピード感を保ったままエンディングまで突っ走る、優れた社会派娯楽映画、だと思ったんだけど、それで済まされないだろうという貧困社会の断片が散りばめられていた。
とくに五体不満足の子どもたちが楽しそうに遊ぶ、マフィアの管理する施設の庭ののどかなシーンが脳裏から離れず、ハッピー・エンディングに「ちょっと待ってよ」という気分だった。
気になって、原作(の日本語版)を買って読んだ。
この原作(ぼくと1ルピーの神様 (RHブックス・プラス))がすごく面白かった(id:pir:20111027:p1)。そしてこの映画は、タイトルの違い*1からして示すように、原作を存分にハリウッド的に料理して作られた別のものなんだなとはっきり感じた。それでインド国内では違和感もあったのだろう。
原作では問題の描写はもっとシリアスなものだったので、その後、インド貧困ルポを何冊かと、日本の乳児院の本も読んだ。ふだん思いよらないところまで私を運んでくれた、そんなパワフルな作品だった。


★★★★☆

*1:原作のタイトルは"Q and A"