瀬川康男遺作展 −輝くいのち−

ちひろ美術館・東京
2011年10月23日(日)まで


松田道雄の「私は二歳」を二歳半過ぎてようやく読み始めたところ、挿絵がいわさきちひろだった。
ちひろ美術館は10年振りくらい。学生のときは全然気づかなかったけれど、子ども歓迎の姿勢が色濃く、一緒に入りやすい気配りがたくさんあり、子連れには嬉しい美術館だった。


ちひろのあかちゃん」の展示は、「おふろでちゃぷちゃぷ」の原画など。実際にあかちゃんを育てた経験が重なると、愛らしさが何倍にも感じられた。「私は赤ちゃん」など松田道雄の著書の挿絵の展示もあり、本よりも大きいサイズで原画をたくさん見られたのが嬉しかった。
55歳で亡くなる前の、最期の作品も赤ちゃんだったんだ。そんなときに生命の瑞々しさに溢れた赤ちゃんを描くのはどんな気持ちだったろうと思った。


もうひとつは「いないいないばあ」でおなじみ瀬川さんの展示。
あの不思議なタッチは、色を塗って紙を切って貼ってそれをはがしてというような複雑な手法によるものらしい。
他の本はあまり知らなかったけれど、どれも原画の迫力がすごかった。
いわさきちひろの原画を見たときはあまり感じなかったけれど、瀬川さんの作品は原画のほうが圧倒的に良かった。
どんどん作風が変わり、多彩な表現をした人だったようで、緻密な書き込み、こだわりの紙の質感は平坦な印刷では再現できず、つまらなくなってしまう。
そのためか途中で手刷りの私家版の絵本(限定9部とか)を出したりしていた。でもそうなるともう本来のこどものための絵本ではなくて、大人のための「絵本という体裁をとった美術品」になってしまって私は面白くないと思うけれど*1、それも致し方なしというかんじのそうそうたる原画連であった。


翌日、古本屋で「ことばあそびうた (日本傑作絵本シリーズ)」を見つけたので買った。夫の子ども時代にも傍らにあったらしい。

*1:使いにくいデザインが嫌いなのと同じで